◆風叙音・fusionの句会より

 

 2015年3月句会より                                  

  安良城 京

三崎口ひとひとひとや花の雲

うそ寒や迷ひ人てふ齢かと

春蘭の人目忍んでかくれんぼ

 

 

 

  稲名慶子

遠巻きの雪点点と心字池

つくしんぼオンリーワンの歌好む

空狭し狭しと梅の真白かな

  江川信恵

吟行のグループ多く梅の庭

蒼天をきりり突き刺す梅の枝

菜の花の十本ばかりひかり咲き           

  笠原しのぶ 

湯に浮かぶ星を数へて梅一輪

恥づかしや葉蔭にちらり蕗のたう

木の芽和え顔の綻ぶ二合酒

  加藤三恵

躾糸切つて出勤新社員

暁の日々に早まり梅一輪

水琴窟小さき春の声を聞く 

  久下洋子

ドイツ村芝桜背に子等憩ふ

落椿赤ひとときの色香酔ひ

花曇病みて静けし日々となり

  グライセン

春菊の香り広ごる箸休め

春帽子影もお洒落な散歩道

春雷や物憂し心沸き立てり

  純 平

朝散歩名のみの春の闇路かな

梅咲くや仏壇光る四十九日

風光る飛行機雲の一文字

  高橋小夜

風車風に命を授かれり

薄氷や胎児に届く外明り

球体を蹴つてふらここいざ宇宙

  高山芳子

白木蓮空に向かうて鈴鳴らす

花の途緩きカーブに消えし恋

里人の知らぬ城址や花曇       

 

  田中奈々

いつしかに白木蓮の湧く垣根

見上ぐれば辛夷の花の真つ盛り

朧なる深夜ラジオのブラームス

  角田美智

その名ゆゑ抜かず咲かせり母子草

摘草やどの記憶にも妣在りて

シャボン玉揺るる柳に消えにけり

  永井清信

春陽や気をよくなせる眠り猫

ひな飾り忘れ去られて幾年ぞ

鶯に初音はいつと尋ねけり

  永岡和子

畑打の狭庭思案の日和かな

剪定の鋏せはしや革ベルト

みちのくの仏と三たび梅日和

  永嶋隆英

白梅やひとつぽつぽつまた一つ

ぐうたらの眼の光る猫の恋

啓蟄や鵜の目鷹の目鳶の目

  中村一声

 

雛の間に集ひし子等はいま何処

外灯の揺れて侘しき寒の雨

春光の浜辺の砂は踊りけり

 

  中村達郎

悴むやぺーじを捲る音ばかり

高尾山芽立ちの遅速ありにけり

春泥を避けて通るや鎌倉路

  西川ナミ子

梅古木添ひし若木の花の色

啓蟄の宙に膨らむ大気かな

卒業の先を夢みしペダルかな

  森田 風 

ひたひたと足音春や梳る

息災を確かめ合うて彼岸かな

磨かるる鏡面や桃の花 

  山口律子

黄緑を包み隠して蕗の薹

くるまみち汚れし土筆佇みて

声はづむ卒園式の練習児

  山下文菖

 

耕せば鶺鴒すつと飛び来たり

大大根歓迎されず干されけり

芹摘むや阿夫利嶺遠く光りたり

  山田詠子

受験子の帰り待つ父散歩道

春の日に連なる幼児帽子の黄

春の風登校児童の背を押す

  山田泰子

美味しさを思ひ増したり畔青む

大津波別れの際に春はなし

昼さがり一睡の夢春来り

 山平静子  

遠くでは春吹雪とや眠り入る

佐保姫の優しく舞ふや香り立ち

春愁嫌な己を締め付ける

 渡辺克己 

風孕み色ここに在り花ミモザ

春風やどこまで遠き雲の道

春風や露天の海に音はなし

  渡辺眞希

梅一枝村の雀の煌めけり

春昼や浮き浮き歩む影愛し

再会の返信迷ふ春の宵

2015年2月句会より           

  安良城 京

まつ新なる雪道ひとり新刊書

蓮の実の忘れ形見や池の端

数へ日のたちまち暮れとなりにけり

 

 

 

  稲名慶子

朝まだき失せ物三つ寒の水

干柿の残り一つや良寛忌

春待つや鼻緒の紅き桐の下駄

 江川信恵

静かな夜囁き声で鬼は外

寒風や富士の姿は闇に溶け

蠟梅の香り届きし昼下り

 加藤三恵 

東風吹かば西施の声と憶えけり

水温む西施の里で香選ぶ

魯迅故居巌の下に草芽ぶく

  久下洋子

紅梅の見上ぐる空の青さかな

水仙を揺らして風の庭を占め

退院のわが子迎への花飾る 

  グライセン

歳旦や輝く一機青空へ

蠟梅の香り誘ふくづれ塀

ゴンドラの寒三日月や帰路急ぐ

  純 平

節節に風邪の先鋒潜みをり

お早うと白息かへす散歩人

もう一つやつて仕舞おか日脚伸ぶ

  高橋小夜

鬼は外心の闇に豆を打つ

能面を打つ手惑はす春霙

ゆるき日を束ねて透かす霜柱

  高山芳子

蠟梅や匂ひ気儘に風任せ

この雛やそつと笑ひし赤子会ふ

北風のビンタ食らひし地下出口

  田中奈々

春炬燵句帳白紙でまどろみぬ

薄氷や孤独解けゆく友の声

紅梅へ白咲く頃を問うてみる       

 

  角田美智

白銀の蕾を天に辛夷たつ

春霞山裾巻きてたちにけり

漬物の桶にひそむる余寒かな

  永井清信

早春の一句詠みけり石山寺

水取の古へ伝ふ火の粉かな

まだ咲かぬ梅にその日を尋ねけり

  永岡和子

へばりつく石蓴のかをり白き雲

春暁や斜光の木々の目覚めけむ

ランニングポリスお目見え首都の春

  永嶋隆英

一夜明け見るも触るるもお正月

塩梅よき初湯や我が身喜びぬ

新玉やあまたの星もさもあらむ

  中村一声

天命に心傾け除夜の鐘

富士の山師走の巷見下ろせり

風に舞ひ樹々より高き枯葉かな

  中村達郎

 

初糶やだみ声ひびく魚市場

杣人の見上ぐる山や眠りたり

朝まだき街並照らす雪明り

 

  西川ナミ子

停止線引きたし風邪の連鎖かな

風を背に交はす挨拶犬ふぐり

侘助の遠き夢みし花の色

  森田 風

首傾ぐほどに待つ身の雪達磨

文字追ひししじまの谷や冬深し

大根の白き肌冴ゆ朝支度

  山口律子 

風流を蹴散らかしての落葉かな

初詣老いも若きも願ひ込め

立春の白無垢の子の眼鏡かな 

  山下文菖

凍星のまばたき忘るオーロラ光

心地良き雪踏む音や霧氷林

春泥のひつつき厚く層なせり

  山田詠子

 

急かさるる訃は駅毎の寒さかな

立ちこぎの銀輪下校寒夕焼

すり抜ける陽の清々し春きざす

  山田泰子

春の朝半世紀経て友の声

雪解水来る兆しや遠からず

此の春の中今生きる恵かな

  山平静子

春光の奥の部屋までのびにけり

エアコンの悲痛な喘ぎ春嵐

霾や我は何処へ行くのやら

 渡辺克己 

ひらひらと句心湧きし梅一輪

君が如心開きて梅の花

ジョギングの息のあがるや梅こぼる

 渡辺眞希

見えぬ香や合格願ふ梅日和

夕映えや餌付けのパンに鴨の群れ

冬晴の連山くつきり浮びをり

2015年1月句会より              

  安良城 京

春愁や理解しがたき反抗期

青空の時止めてをり氷柱かな

初詣退院祈る茶断ちかな

 

 

 

 稲名慶子

御降りや両手に賜ふ白き幸

雪舞ふやゲームセットと子等合図

白き月雲に入らむ寒夕焼

 江川信恵

寒晴の気づきし影は前屈み

柚湯出で香りとともに部屋に入る

年の瀬を夢見て過ごす宝くじ

  笠原しのぶ 

葉陰より忘れし頃に寒椿

車窓より北の凍てつく碧海(あをみ)かな

干大根寡黙な風の渡り行く

  加藤三恵

小夜しぐれテールライトの紅滲む

塔頭の白き風切る雁一羽

初春や易者に豪華な嘘を買ふ 

  久下洋子

膝掛けの温もり増すや眠り入る

女正月朝の忙し粥作り

雑煮餅増えて体の重みかな

  グライセン

オレンジムーン街の隅々暖めり

日溜りの干さるる布団和らぎぬ

霜踏みしトイ・プードルの脚上がり

  小山昌子

旅にゐて思ふ常の日枇杷の花

飛び交ひし長寿のレシピ日向ぼこ

人幅の小さき踏切みかん熟る 

  純 平

初市の大根雁首揃へをり

税の年しまつ始末の十二月

忌明けの主なき家や悴めリ

  高橋小夜

枯山の鉄塔命つなげけり

乳歯抜けそつと手を添ふ初鏡

御降りや氏神詣の白き列       

 

  田中奈々

光受け小さき粒どち草珊瑚

スカイツリー展望ずいと淑気かな

鷺映る水面を流す小鴨かな

  角田美智

一本(ひともと)の花の木のあり冬木立

まゝならぬことの多かり冬ざるゝ

初茜彼方に白き月の在り

  永岡和子

浜風を背(せな)で受けとめ初読経

大振りの椀に香の立つ七日粥

流行風邪又反故にせしランチ会

  永嶋隆英

元旦のラジオ流るるケ・セラ・セラ

千両万両あふるる荒れ屋かな

初霜や踏めばぐくつとみりみりと

  中村一声

睡蓮とこの四阿に酔ひにけり

あの路地もこの路地もよし京紅葉

愛日の砕けし魂へ添ひにけり

  中村達郎

 

初夢やいつもの顔の山の神

新年や涙の襷つながるる

極月や父を偲びて一人酌む

 

  西川ナミ子

静けさの底より微か除夜の鐘

水引を結ぶ在所の松飾

冬枯や霜葉色を秘めてをり

  森田 風

焼き葱の醤油・塩派の味談義

掛軸の正座して居りお元日

手招きしくもり戸入るや未年

  山口律子 

冬晴や花々の鉢動かしぬ

元日や真つ新の刻流れをり

脱ぎ捨てて天に向ひし冬の樹姿 

  山田詠子

数へ日やメモ持て走る風の町

泣き笑ひ手垢残せし古暦

年賀状息災二文字包み込む

  山田泰子

 

羽子板の打つ音無しの広場かな

風邪ひきて朝夕富士に祈る日ぞ

旧友の賀状の言端気になりし

  山平静子

年新た宙の一皮剝けて見ゆ

メール来る 「インフルエンザにて候」

待ち侘びし賀状来らず無為自然

  渡辺克己

賴もしき産声去年の調べかな

山うそぶけば紅の寒さあり

やはらかき日や妻の手に山東菜

 渡辺眞希 

願ひ込め小さき水仙見つめけり

夢で聞く鐘の音なり年新た

柔肌に白き跳ねたる雪華かな

2014年12月句会より           

  安良城 京

あやとりの会話弾んで手話のごと

台風の近づく海や白兎光

秋桜(コスモス)の平和の色や宙染むる

 

 

 

  稲名慶子

尊厳死そんなのなしや櫨紅葉

虎落笛すぐに遠のくレジェの駅

御嶽の烟残して山眠る

  江川信恵

猪口徳利出番無きまま寒さ浸む

柿の葉の落ちて実だけの揺られをり

歩きつつ紅葉の色の移り見ゆ

  加藤三恵 

冬ざれの江戸振り返る翁の像

羽子板市スターの陰に藤娘

鯛焼の餡は尾までを良しとする

  久下洋子

病み最中冬至南瓜のお裾分け

年暮るる干支の引継ぎ式なれば

年の瀬や大売り尽くし買ひ漁る 

  グライセン

紅葉の光りて貴石なりにけり

守られて蕾膨らむカリフラワー

点描のごとく山茶花レース越し

  小山昌子

線描のほとけふくよか冬麗

これよりは巡礼の道冬すみれ

冬ぬくし年相応といふ見立て

  斎藤幹司

冬紅葉一樹ありたる坂の上

冬桜薄き重ねて見えしまま

空散りし仲間と耀ふ銀杏かな 

  純 平

定年や慣れぬ手つきで松手入

待つ程に皮一枚の熟柿かな

母逝けり庭の柿入る頭陀袋

  高橋小夜

星月夜時の流るる音のして

木の実降る一日五本のバス乗り場

霜降りて白湯一碗を包みこむ       

 

  田中奈々

大縄の大波小波吊し柿

黄落やハイヒール履く急ぎ人

山茶花の吹き寄せられし留守の家

  角田美智

冬木立智恵子となれず髪染むる

炉開きや紅志野の碗掌に温し

竹垣を濡らし過ぎ行く初時雨

  永井清信

願ひ込め縄を縒りたる飾りかな

一陽来復見え隠れする日の輪かな

聖樹立ち心に灯る明かりかな

  永岡和子

又一つ断捨離をして冬ざるる

部活子の凛と弓ひく寒稽古

露天風呂独り占めせし峰の雪

  永嶋隆英

ぢつと手を見るか勤労感謝の日

歳時記をめくりめくりて師走かな

ゆく人のなき人ににてかむな月

  中村一声

 

モネの睡蓮蛙飛び込む音はなし

(いが)栗を懐紙に裹み床の間に

一篇のヴェルレーヌかな秋の雨

 

  中村達郎

満月や風叙音句会宴盛り

破れ家のただ一本(ひともと)の柿紅葉

指折りて句作に悩む文化の日

  西川ナミ子

小春日やアスレチックの子等の声

山茶花の咲きて樹陰のほの明り

日溜りや寝息聞こゆる小六月

  森田 風 

働きし手の皺埋むる冬日向

鳶職の手足に刺さる寒さかな

山茶花や散る音の無し花筵 

  山口律子

それそこに他を圧せし紅葉かな

宮島の神鹿さつと迎へけり

車中にて晴着脱ぎ捨つ七五三

  山田詠子

 

新手帳夢のふくらむ冬初め

秩父路や秋結願の夕の鐘

役去りし世代育む照落葉

  山田泰子

桐の実の鳴るや箪笥の造り家に

無患子の降る音激し寺の庭

少年の紙飛行機や冬空へ

   山平静子

病む人に何を贈らむ師走風

年の暮媼二人の宴かな

冬入るやいくつ重なる訃のしらせ

 渡辺克己 

山茶花の散るを見るなりベッドより

回り行く天井の秋手術台

皆居たり同期同窓古稀の秋

 渡辺眞希

至福かな師と仰ぎたる冬銀河

師の徳を感謝で迎へ冬に入る

相模湾入日に映ゆる蜜柑山

 2014年10-12月 ⇒ http://fusion.p-kit.com/page0006.html

 2014年1-9月 ⇒ http://fusion.p-kit.com/page316625.html

 2013年 ⇒ http://fusion.p-kit.com/page279657.html

 2012年 ⇒ http://fusion.p-kit.com/page239228.html

 2011年 ⇒ http://fusion.p-kit.com/page202741.html