風叙音・fusionの句集案内 |
■十句 つちのこの眠るふるさと木の根開く まだ峰の白きを仰ぎ卒業す 妙高山(めうかう)の雪形見ずに父眠る 一句添へマリンブルーの夏見舞 もろこしを少し焦がして祖母の昼 秋陽射すバトン渡す手受くる手に 終電の灯は点となり虫の声 秋の夜の新書かすかにインクの香 妙高山(めうかう)に真白きものや大根抜く 終電を降りてひとりの寒オリオン
| 『句集 ゆきあひ』 金子宗彰句集 (第一句集) ■2023年11月24日刊行 私家版
■目次 花咲くころ/蟬なくころ/月明るころ/雪降るころ
|
■自選十三句 白魚の思ひの丈を透かしをり とめどなき水のお喋り猫柳 悲愴とは薊の棘に宿りけり 青葉風言葉の余白読むごとく はぢらひの君よ花桐が咲いてゐる 草千里斜に線曳く男梅雨 やゝこしき話はあした盆の月 青空を胡桃の部屋に忍ばせり 口紅の盛り多くして十三夜 狛犬のあ・うんのあくび神の留守 逢引の女と来る時雨かな 脳髄の青で思索す年の暮 数へ日や時計の中に海がある
| 『花信風』(かしんふう) 笙鼓七波句集 (第三句集) ■2013年6月20日刊行 角川書店
■目次 風のオラトリオ/風のオペレッタ/風のカンタータ/風のポルカ/風のエチュード/風のセレナーデ/風のレクイエム/季語索引
■帯: 「句集 『花信風』 のテーマは、三つある。すなはち、①俳句における客観と主観とを融合すること、②俳句のリズムと音楽の旋律とが親和すること、そして、③東洋的な俳句の精神と西洋的な詩の精神とを融和し、調和世界を現出することである。」(「あとがき」 より)
■書評:『俳句』2014年1月号(「風の匂い」「魔法をかけたような作品」・奥千本億千万の花の宴・落つるほど明るくなりし椿かな・撫子のたゞあるがまゝ咲きにけり・冬を愛す魂の透けゆく京なれば・かくれんぼ遊びがいつか冬籠・立山に似合ひの月のかゝりけり (鈴木章和氏評) 2013年7月30日「増殖する俳句歳時記」・ 水を打つ曲りさうなるこゝろにも(土肥あき子氏評)『沖』2013年8月号・八月を象の隊列運び往く『谺』2013年9月号・よその妻借りて脱兎の運動会(有馬五浪氏評) ほか
■ご注文は、「問い合わせ」 メールにてお申し込み下さい。
|
■自選十句 テレビいま田舎の古刹去年今年 春立つや色鮮やかに新刊書 一匹の蝌蚪の国なるガラス瓶 草毟る腰のラジオの 「九条」 論 海猫に浜を返して夏惜しむ 稲妻の走り忌中の簾(す)をたたむ 木馬みなまどろんで居る残暑かな 卓袱台に飯と味噌汁文化の日 襟裳晴れ海境(うなさか)閉ざす冬霞 路地将棋負けて帰るか冬帽子
| 『蜆のつぶやき』(しじみのつぶやき) 今村 廣句集 (第一句集) ■2013年6月4日刊行 ふらんす堂 平成15年/平成16年/平成17年/平成18年/平成19年/平成20年
■今村 廣(いまむら・ひろし) 現代俳句協会会員・「風叙音」 同人 (1933~ ) 小学生から俳句を始め、楠本憲吉ほかに師事
■帯:笙鼓七波(「風叙音」 主宰) 「『蜆のつぶやき』 の一句一句に、今村氏は、蜆に仮託し、蜆に己を貶めて、ひねりを加へて俳句世界に遊び呟いてみせたのである。一たび活字となつて世に出された瞬間から、句集 『蜆のつぶやき』 は、一文学作品としての価値をもつて本人の意思にかゝはりなく評価されることになるであらう。」(「序」 より) ■「序」:笙鼓七波
|
■自選十二句 蕗味噌や妣の小言の聞こえをり 観念の眼を閉ぢてをり春の夢 混沌の海に対へり錨草 蝶の生るあえかの月の沈む時 春の月ものがたりせり犬と人 今日のみの花を求(と)めゆく高瀬舟 蝉の羽の羅纏ひ恋に出る 溽暑とて余白の街に迷ひけり 鴫立つや琥珀の中のシルエット 勁風や疾(と)く迫り来る虎落笛 鈍色の海に鋭き寒薄 厖大な月の虧けゆく十二月
| 『勁風』(けいふう) 笙鼓七波句集 (第二句集) ■2009年4月4日刊行 角川書店
■目次 風のニルヴァーナ/風のエタ・ダーム/風のル・タン/風の熾天使/律の風/風の遺言
■帯:大輪靖宏氏(上智大学名誉教授) 「笙鼓七波氏の句は、第二句集に至ってますます発想の自由さを増している。しかも、その根底には、日本的な写実精神と西洋的な詩精神という両者がしかと共存して、不思議な調和世界を作り出している。この奔放にして緻密な句構成は俳句の可能性の枠を大きく広げ、俳句文芸の進展に大きく働きかけることだろう。」
■書評:『俳句』 2009年10月号ほか ■「あとがき」 より 「俳句における写生とは、事実を真実として細叙細説するに終始するのではなく、自然を通して己の内奥に照応し、己を通して自然を定着させることであらう」
■ご注文は、「問い合わせ」 メールにてお申し込み下さい。
|
■自選十二句 水天の光りと翳り蓴(ぬなは)生ふ 初蝶の光に化粧(けは)ふひらひらと 天降(あも)る蝶火焰となりて風と消ゆ 紫木蓮火群(ほむら)なしてぞ昇りゆく 躑躅燃ゆ魔女の饗宴果てしなく 睡蓮や光の飛翔闇を突く 鍬形虫夜天の月を捧げ持つ 蹲踞(つくばい)の内にたゆたふ月天心 鮭遡る銀鱗キラリ跳躍す 寂として時止まりをる湖の秋 黙契のごと群集(くんじゆ)せむ寒立馬 凍鶴のそつと脚替へ眠りをる
| 『凱風』(がいふう) 笙鼓七波句集 (第一句集) ■2007年4月4日刊行 ふらんす堂 風の舞/風の色/風のラビリンス/風のエチュード/風のメタモルフォーゼ/恋風/風のかたみ
■帯:大輪靖宏氏(上智大学名誉教授) 「笙鼓七波氏の句は、日本の伝統精神を根底に置きながら、それに西洋の詩精神を見事に調和させている。また、俳句の基本たる写実性を守りながら、その俳句を象徴詩的なシンボリズムにまで昇華させている。あくまでも俳句でありながら、詩でもあり得るという意欲的な試みが、ここになされているのである。」
■書評:「朝日新聞」 2007年6月4日、「吹越」第6号ほか ■紹介:「俳句朝日」 2007年6月号、「俳句」 7月号、「俳句研究」 9月号ほか ■「あとがき」 より 「俳句が象徴詩になり得るか否かは議論のわかれるところであるが、象徴詩たらむと意図したのが、『風のラビリンス』 『風のエチュード』 である。果たしてさうなり得たかどうか」
■ご注文は、「問い合わせ」 メールにてお申し込み下さい。 |